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ワークショップの補足の続きです。●現場のフォローが大切、というお話しをしましたが、自身の体験を踏まえてもう少し具体的にお話しをしたいと思います。

花王に在籍していたときは、職場単位のワークショップを推進したわけですが、その職場のリーダーがファシリテーターになって進行するというのが基本的な枠組みでした。本社の事務局は、できうる限り立ち会ってオブザーブするようにしました。

リーダーにはアシスタントがついて、会場の設営などの準備と、当日の進行のサポートをします。ワークショップがルーティンになると、その顔触れが固定してきて、彼が彼女がいつの間にかその職場の窓口になっているといった感じです。海外の場合は、会社のトップに Contact を指名してもらい、正式な Job として認めるようにお願いをしますが、日本国内の場合は、特に Job Description がどうのこうのという話しにならないところが面白いところです。そうした窓口を設けることができれば、そこを通して現場をフォローする体制が整ったことになります。

このブログでたびたび紹介してきましたが、組織開発のコンサルタントの加藤雅則さんは、著書『組織は変われるか』(英治出版)のなかで、つぎのような主旨の指摘をしています。

〃マネジャーには、「仕事マネジメント」と「組織マネジメント」のふたつの仕事がある。本来、部長職にはこのふたつのマネジメントスキルが必要だが、高速回転のビジネス環境のなかでは、前者に偏っているのが実情だろう。著者の肌感覚で言えば、8対2くらいの比率である。本来であれば、5対5が部長層に望まれるところである。課長までであれば、8対2でもよいかもしれないが〃

これはわたしの感覚ですが、組織マネジメントはそうとう難しい。にもかかわらず、まるで誰にでもできるような前提で、仕事マネジメント力だけで昇進するようなケースもあるような気がします。せいぜいマネジャーになるときのおざなりな研修で済ませてしまう。

こうした問題に対応するためにはメンター制度なども有効でしょうが、もっと踏み込んでそれぞれの部署に人事のプロを配置して、トップをサポートさせるくらいのことが必要ではないかと思います。面談も評定もフィードバックもいっしょに実施するような、いわばトップのパートナーです。そのくらいしてはじめて、仕事マネジメントと組織マネジメントがバランスすると思います。

もしそういった人事のプロが、現場も踏まえて理念担当を担ってもらえるとしたら理想的でしょう。わたしの知っている範囲では、トップと人事のパートナーシップは海外の小ぶりの会社で多くみられたような気がします。そして、もしそういったパートナーシップが成立していれば、前回ふれたウェイ・マネジメントに関心の薄いトップに対しても、働きかけは格段にやさしくなるでしょう。

このブログは、毎週火曜日+αで更新しています。

下平博文
Philosophy Driven Organization Network 主催
shimodaira.hirofumi@PDONetwork.com



# by pdoneteork | 2019-08-06 10:00 | Comments(0)

前々回、ワークショップのポイントについてのお話しをしましたが、今回は少しその補足をしたいと思います。●無理をしない、という項目が「上司が理念をあまり重視していない場合も効果は薄いと思います」という文章で終わっていました。当然のことながら、その場合はどうしたらよいのか?という疑問が湧くと思います。

わたしの答えは、「その場合は、無理をしてやらないほうがよいのではないか」というものです。これは意見が分かれるところだと思います。人事系で、社員の機会の公平性にこだわる人には、これはどうもとても居心地の悪い考え方のようですね。

「馬を水辺につれていくことはできても、水を飲ませることはできない」 “You may lead a horse to the water, but you can’t make him drink” という(わたしの好きな)諺があります。理念というのは、どちらかといえばここでいう水のようなもので、無理強いはできないというのがわたしの基本的な考えです。

理屈でいえば、レッスン35で紹介したように、理念は戦略に先立つもので、仕事の目的そのものでもありますから、本来これを軽んじるようなことはありえないということになります。しかし、目の前に仕事があり、目標があり、ノルマがあるという状態では、必ずしもそこまで遡らなくてもビジネスの日々は過ぎていきます。

それに前回触れたように、理念にカルト的なにおいを嗅ぎとってしまうこともあるわけで、その場合はなおさら抵抗をくつがえすのは難しいし、むしろ刺激しないほうがよいのではないかと思います。

それでも、もし相手がフランクに話しかけることができる人物であれば、わたしだったら「だまされたと思って一回ワークショップをやってみたら?ぜったいいいから」と言ってみます。実際にそう言ったこともあります。

このブログは、毎週火曜日+αで更新しています。次回ももう少しこの話しを続けます。

下平博文
Philosophy Driven Organization Network 主催
shimodaira.hirofumi@PDONetwork.com



# by pdoneteork | 2019-07-30 10:00 | Comments(0)

1カ月くらい前、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビューのサイトで『あなたの会社の文化はカルト的になっていないか』という記事を読んだので、今回はそれを紹介したいと思います。「集団思考はイノベーションを阻害する」という副題がついています。著者はマンフレッド F. R. ケッツ・ド・ブリースというINSEADの教授です。

古くは『洗脳するマネジメント~企業文化を操作せよ』という本がありました。長く企業理念の担当をしていたので、関係する書籍にはできるだけ目を通すようにしていました。そもそも企業文化にネガティブに言及する文書は少ないと思いますが、そのような側面について考えることも非常に重要だし、担当者にとってはありがたいと思います。

「企業理念て、なんか宗教っぽくて、やだな~」

そもそもがわたし自身が、担当にでもならなければ真っ先にそんなことを言っていたような気がします。記事のリード文をそのまま引用します。

〃アップル、テスラ、ザッポス、サウスウエスト航空……称賛を浴びる企業は強烈な文化を持っている。独自の企業文化は、従業員の仕事への意欲を引き出し、組織のパフォーマンス向上にもつながる。だが、会社の色に染まることを半ば強制され、多様性が尊重されなくなったら、それはカルトである。従業員を奴隷化するような組織からイノベーションは生まれない。自社がカルト化していないか、その兆候を見極めて適切に対処する方法を示す〃

企業文化は、あっさりとカルト化してしまう傾向があり、上記のような企業は、そのぎりぎりの線を綱渡りしているといいます。

企業がカルト化しかけているかどうかを、どこで見分けられることができるのでしょうか?

著者は手がかりのひとつとして「言葉」をあげています。一般に、企業カルトは帰属意識を強めるために、独自の用語を作り出すのです。たとえばディズニーでは、従業員を「キャスト」、顧客を「ゲスト」と呼びます。園内にいるときは「オンステージ」。アトラクションが故障などで停止したときのコードは「101」。

さまざまな儀式も危険信号だといいます。例として、ウォルマートで日課の一部となっている、ウォルマート・チアという全員参加のかけ声。こうした儀式は欧米人の目にはいささか時代遅れに映るかもしれないが、アジアの少なからぬ企業では特色のひとつになっているとされ、ヤマハ、堀場製作所、JR九州の例があげられていますが、どうなんでしょうか。

著者は最近、米国のある一流テクノロジー企業の週1回の「集会」に出席したところ、その熱狂ぶりは “まるでキリスト教福音派のリバイバル集会に来たよう” だったといいます。

こうしたカルト的な行動はなにがまずいのか?もちろん社員個人を抑圧し、健全な議論を排除するからです。それが組織の硬直化を生み、イノベーションを阻害し、企業の将来を危険にさらすからです。

そのために、著者は管理職に次のように自問することを勧めています。

〃従業員が会社のビジョンを信じているのは、それを理解し賛同しているからなのか。それとも、信じることになっているからなのか。会社は、従業員が充実した私生活を送ることを奨励しているか。何より、ブレイクスルーの原動力となる個性や、安易に同調しない姿勢を促しているだろうか〃

わたし下平の考えは、理念(文化)の浸透が自己目的化したときにカルト的な方向に傾くのではないかと思います。あくまでも、ビジネスにフォーカスをした活動にすべきではないでしょうか。

引用は、Diamond Harvard Business Review 2019.06.04からでした。
https://www.dhbr.net/articles/-/5926

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下平博文
Philosophy Driven Organization Network 主催
shimodaira.hirofumi@PDONetwork.com



# by pdoneteork | 2019-07-23 10:00 | Comments(0)

ウェイ・マネジメントの活動を始める準備段階として、体制、目的、評価の3点について固めておくことの大切さについてお話しをしてきました。また、そこから派生して、共感・理解・行動の軸で目標を立てることができることを紹介してきました。

具体的な施策(企画)については、何も触れてきませんでしたが、それは事務局のみなさんが自身で考え、つくるべきものだと思います。実際に活動が始まれば、どんどん改良していくことになりますが、そのときにオリジナルが自分たちでつくったものでないとロスが出てしまいます。

企画のなかには、ワークショップ的なものを考えていらっしゃるみなさんも少なくないと思うので、今回はその際のポイントを、わたし自身の経験を踏まえて幾つか紹介してみたいと思います。

 ● パイロットを走らせる

いきなり全社的に活動を立ち上げるのではなく、パイロットを実施してプログラムの内容や進め方についてチェックをします。現場の社員にとっては、本業に使う時間と労力を理念の活動のために割くことになるわけですから、最初の導入は慎重にしてください。「現場を知らない〇〇部が、またよぶんな仕事を振ってきた」とかいわれないように。

 ● 前後で評価をする

具体的には高尾先生の質問票がよいでしょう。パイロットのワークショップを実施する前と後で質問票に答えてもらい、共感・理解・行動について意識がどのように変わったのか効果を確認しておきます。全社で広げるときの説得に使えます。
なお、ワークショップや研修で必ず事後アンケートを取ることにしているという組織もあるようですが、目的がはっきりしないアンケートはしない方がよいと思います。わたし自身は、プログラムの改良を目的にしていました。5段階評価のようなものは、改良の参考にはあまりならないと考え、オープンアンサーで意見・感想を書いてもらうことにしていました。

 ● ファシリテーションは自前

いまはいろいろなところでファシリテーションを教えてくれるので、外部のそうした教室に通うなどして、社内のリソースだけでワークショップができるようにしておきます。まず事務局がそうしたスキルを身につける必要があります。最初のうちはアドバイザーとして社外の専門家に入ってもらうという手もあると思います。
ファシリテーションをすごく厳密に考える人もいますが、わたしは人を傷つけるようなことがなければ、あまり難しく考えなくてもいいのではないかと思います。メンバー全員がファシリテーションをできるような組織を目指してもよいのではないでしょうか。

 ● 無理はしない

理念は、人の気持ちに関わることなので、組織の状態があまりよくないときに無理にやることはお勧めしません。高尾先生の研究によれば、一人ひとりの理念の浸透にいちばん影響を与えるのは職場の上司です。少なくともリーダーとメンバーの信頼関係が担保されていることが必要で、それがないところで理念をテーマに対話をするのは、かなりきついと思います。また、上司が理念をあまり重視していない場合も効果は薄いと思います。

 ● フォローが大切

事務局が立派な企画をつくって、全社的に現場にドンと落として、おしまい。あとはいついつまでにレポートを出して……というようなやり方は、たぶんかなりよくないです。現場のフォローがきちんとできるような仕組みや方策を考えておきます。

 ● 自信を持って

とはいえ、理念をテーマにしたワークショップは必ず組織にポジティブな効果をもたらします。「効果があるのか」「いまはそんなことをしている時なのか」とか、言うだけは簡単なので、言う人はいるかもしれませんが、自信を持って活動を推進してください。
そのためには、前回紹介したように、事務局として、何のために活動を行うのかというロジックに裏打ちされた目的と、理念が浸透するとこんないいことがあるんだ、という感覚的、感情的な納得感を大切にしてください。

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下平博文
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# by pdoneteork | 2019-07-16 10:00 | Comments(0)

共感・理解・行動の3つの評価軸から活動の「目標」をつくるというテーマでお話しをしています。今回は、「行動」について考えてみましょう。さっそく、高尾先生の質問票をみてみましょう。

● どう行動すれば理念に基づく行動がとれるかを考えることがある
● 自分が社内の会議や打合せで理念に言及したことがある
● 社内宛の文書やメールで、理念を引用したり、言及したことがある
● 袋小路に陥ったとき、解決のヒントを得るため、理念にまで立ち返ることがある
● 難問に直面したとき、理念にまで戻って考えるようにしている

行動といっても、ここでは理念の個々の項目の “実践” ではなく、行動の基準として “活用” しているということを意味しています。仕事の判断の基準になっているといってもよいでしょう。

どうでしょうか。社員のみなさんには、このような行動の習慣がありますか?

それでは、どうしてこのような行動が必要なのでしょうか?いや、必要というとシリアス過ぎますね。次のように言い換えて、今回は “行動のメリット” について考えてみましょう。

「こうした行動が習慣化するとどんな良いこと(メリット)があるのでしょうか?」

わたしの知り合いで、毎朝100年前の創業者の銅像に対して、頭こそ下げませんが、その正面に立つことを習慣にしているマネジャーがいました。これは理念という文言ではありませんが、一日に一度原理原則のようなものに立ち返るという意味では、上にあげたような行動と同じような働きがあるでしょう。

また、その状況では特に理念は意識していなかったけれど、あとで振り返ってみると確かに理念の実践に相当するというような経験はないでしょうか。そのように意識しなかった場合と、意識していた場合と、何がどのように違うでしょうか。

こんなふうに回り道をしたり、視点をずらしてみたりして “行動のメリット” について考え、話し合ってみてください。この場合も、もうこれ以上考えられないというくらい、たっぷりと時間をとって考えてください。チームであれば、何となく同じ風景が見えてきたな……という実感にたどり着くまで、考えと気持ちを交換してみてください。

理念の浸透活動には、何のために活動を行うのかという、ロジックに裏打ちされた目的が必要ですが、いっぽうで理念が浸透するとこんないいことがあるんだ、という感覚的、感情的な納得感が必要です。

特に活動を推進する事務局のみなさんには、そうした確信ともいえるくらいの納得感がないと周囲を巻き込むことができないし、だいいちにやっている本人が息切れしてきます。一人ひとりもそうですが、チームで同じような気持ちを共有することができると、こんなに心強いことはありません。それが同じ風景が見えてきた、という言い回しでわたしが伝えたいことです。

下平博文
Philosophy Driven Organization Network 主催
shimodaira.hirofumi@PDONetwork.com


# by pdoneteork | 2019-07-09 10:00 | Comments(0)