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【内省(リフレクション)】 レッスン45

引き続き、リーダーシップと企業理念(Corporate Philosophy)のテーマで考えたいと思います。

■ ピーターの法則

組織のなかで、選抜され、昇進するということは、それまでの自分の仕事ぶりが評価されたのだから、自分のやり方は正しかったのだという自己肯定感が生まれるのは自然なことだと思います。いっぽうで、昇進にともなう階層研修のような場では、特にスタッフから組織を率いるリーダーになったときには、心構えや物事の発想(マインドセット)を大きく変えなければいけない。強い言葉では、●変身(トランスフォーメーション)が必要だ、という話しが出るのも常だと思います。

これについては「技術的問題と適応課題」というフレームがあります。●技術的問題とは、技術や経験で解決できる問題。●適応課題とは、技術や経験だけでは解決できず、「当の本人が変化しなければ前に進まない」課題です。リーダーになるとは、従来の価値観や仕事のやり方の一部を手放し、新しい能力を獲得しなければならないという意味では、明らかに適応課題です。

とはいえ、「変われ」といわれている本人が、自分たちは「OK」だと思っているので、変身については他人事のようにしか聞こえません。これ自体矛盾したシチュエーションといえるでしょう。そして、リーダーになることを技術的問題として処理してしまおうとします。

その結果組織に起きるのが「有能な人材は出世して無能な管理職の地位に落ち着く」という●ピーターの法則の実現です。

人は基本的には変われない。変わらなければ大きなリーダーになれない。そんなところから、「ひと皮むけた」リーダーになるためには、「修羅場の経験が必要だ」とか、野蛮なことを言う人たちも出てくるわけですが。

■ 内省(リフレクション)

もし人が変わることができるとしたら、いちばん無理がないのは●内省(リフレクション)を通じてではないでしょうか。内省とは、自らに問いかけることです。たとえば、ドラッカーは「経営者におくる5つの質問」として、次のような項目を立てています。

● われわれのミッションは何か?   What is our mission? 
● われわれの顧客は誰か?      Who is our customer?
● 顧客にとっての価値は何か?    What does the customer value?
● われわれにとっての成果は何か?  What are our results?
● われわれの計画は何か?      What is our plan?

5つめは別として、これはぜんぶ企業理念(Corporate Philosophy)に書いてあることではありませんか?もちろん答えではなく、同じく質問として。あるいは、考えるヒントとして。

これまでにこのブログでお話しをしてきたように、企業理念(Corporate Philosophy)にあるのは、基本的に普遍的なことばかりです。ですからドラッカーがピックアップするような基本的な項目を落としているとは考えにくいのです。各社における理念の個性とは、普遍的な考え方のなかで特になにを大切に考えるのかという優先順位づけと、その表現の仕方に過ぎません。

内省といいつつ、わたしがお勧めしたいのは……リーダーがひとりで考えるのではなく、理念をベースにチームのメンバーと大いに議論してみるといいと思います。そのときのポイントは、リーダーの役割は決して最後に正しい答えを出すことではないということです。そうではなくて、メンバーの考えを引き出すファシリテーターに徹するのです。

企業理念にあらためて向き合って、そこからメンバーにどのような議論をしてもらったらいいのか考える。そのことは、リーダーとしての変身へ一歩踏み出すよいきっかけになると思います。無理が少ないアプローチです。

 このブログは、毎週火曜日+αでアップをしています。コメント欄、もしくは下記のアドレスまで、ぜひご意見や質問をお寄せください。

下平博文
Philosophy Driven Organization Network 主催
shimodaira.hirofumi@PDONetwork.com


by pdoneteork | 2019-02-05 10:00 | Comments(0)