人気ブログランキング | 話題のタグを見る

【よきモノづくり】 レッスン54

それでは前回みてきた、「花王ウェイの『よきモノづくり』はきわめて日本的な価値観である」という仮説に立ったときに、わたしたちはどう振る舞えばよいのでしょうか。

あるいは、もっとマイルドに「大事なことは、あなたが生まれ育った場所が、あなたの基本的なモノの考え方や視点に影響を与えるという事実から目をそむけないことです」というホフステード博士のアドバイス(参照p.304)を受け入れるとすれば、どのようにしたらよいのでしょうか。このアドバイスは個人だけではなく、企業という組織体にもあてはまるとして、考えてみましょう。

まず、海外のメンバーが日本とは異なる文化的背景を背負っているということを意識して、この言葉が意味するコンセプトについて、ていねいにコミュニケーションすることを心がけることでしょう。

次に、具体的にどのような行動や判断が期待されているのか、できるだけ形式知(事実・具体性)ベースで共有することではないでしょうか。さいわい、花王ウェイの「よきモノづくり」は、3つのサブコンセプトで構成される構造体です。ちょっとわずらわしいかもしれませんが、ゆっくり読んでみてください。

よきモノづくり Yoki-Monozukuri
 ● 私たちは、消費者の心を打つ満足を実現するために、消費者のニーズを見極め、独創的なシーズと組み合わせて、革新的な商品とブランドを開発します。ニーズとシーズの融合
 ● 私たちは、よきモノづくりのために、全員、全部門の創造性と力を結集します。よきモノづくりの推進力は私たち一人ひとりの熱意であり、これこそが花王の強さの源です。個の力の結集
 ● 私たちは、よきモノづくりを通じて得た利益を、さらに価値ある商品とブランドの創造に投じます。このよきモノづくりのサイクルにより、消費者、社員、取引先、地域社会、株主を含む全てのステークホルダーの支持と信頼を得て、利益ある成長を達成します。よきモノづくりのサイクル


「ニーズとシーズの融合」の項目であれば、「どのように消費者のニーズを発掘するのか」「そもそも消費者とは誰か」「間接部門であれば、なにがニーズでシーズか」……といった具合に、海外のメンバーといっしょに考えるテーマは尽きません。

このブログではなんども繰り返してきましたが、わたしたちは理念に則ることで「筋のいい問いかけ」をいくらでもデザインすることができます。このメリットを活かします。

そして、このように理念を「問いかけ」として機能させれば、”Yoki-Monozukuri”が、言葉として意味がわからない(日本語だから海外の人には前提)ということさえ、大きな障害にはならないのではないでしょうか。

参照)
『経営戦略としての異文化適応力 ホフステードの6次元モデル実践的活用法』
宮森千嘉子、宮林隆吉(日本能率協会マネジメントセンター)2019


下平博文
Philosophy Driven Organization Network 主催
shimodaira.hirofumi@PDONetwork.com


by pdoneteork | 2019-04-09 10:00 | Comments(0)